任意整理とは?

「任意整理」とは「債務整理」のうちのひとつ、文字通り「任意で借金を整理すること」です。裁判所など公的機関を通さずに債務者が債権者と交渉をして、借金の利息や支払額などを減額してもらうのが「債務整理」です。実際は、債務整理に詳しい弁護士さんや司法書士さんに相談をし、代理交渉してもらうことが一般的です。

現在支払っている返済額では支払いが厳しいけれども、できるだけ借金を返済していきたいと考えている人に最適な債務整理の方法となります。

なぜ借金を減額できるのか?

交渉をしたら、なぜ借金を減額してもらえるのでしょうか?任意整理で借金を減額できる理由は、「利息制限法」と「出資法」という2つの法律での利息の上限が異なるからです。「利息制限法」は利息の上限を定めている法律です。その「利息制限法」によると、

  • 10万円未満の借金だと利息は20%が利息の上限
  • 100万円未満の借金だと利息は18%が利息の上限
  • 100万円以上の借金だと利息は15%が利息の上限

と決まっています。一方、多くの金融業者が利息の基準として採用しているの「出資法」のものであり、「出資法」では29.8%が利息の上限です。驚くことに「利息制限法」と「出資法」の差は最大で14.2%にもなります。

このことを知っている人は少なく、言われるがままに本当は支払わなくても良い利息まで支払っている人が多いのが実情なのです

任意整理はこの差額を計算し、払い過ぎていた金額を借金の元金の返済に充てます。そして、残りの借金を無理のない支払い額の返済計画で分割して支払っていこうという方法です。この任意整理を行った場合の多くは、「これ以降の利息をカットする」という条件で分割での返済に応じてくれます。

「出資法」での利息29.8%で借金を返済していると、なかなか元金は減らずにいますが、任意整理をするとそれ以降では利息がカットされる場合が多いので、借金の総額が減ると同時に返済までの期間も短くなるのです。

任意整理は、借金はできるだけ返済したいけど、現在の支払額では難しいという方に最適な債務整理法です。任意整理を行うと余計な利息を払わなくてもよく、現実的な返済計画を立てられるようになります。

ただ、ここまでの話の流れでお気づきだと思いますが、任意整理は借金の金額を減らすことが目的で、借金をなくすことが目的ではありません。ですので、任意整理をできる人の条件として、今後3~5年間に渡り分割して支払うことができる安定した定期収入があることが原則になります。

ワンポイントアドバイス

ここでいう「安定した定期収入」とは、職業がサラリーマンということだけではなく、アルバイトでも年金受給者でも可能です。

任意整理のメリットとデメリット

メリット

特定の債務(借金)を対象としての減額ができる
利息制限法ではなく出資法にもとづいた利息を支払っていた借金だけを対象に減額の交渉をしたり、連帯保証人のいる借金は任意整理の対象から外したりなど、任意整理の対象にする借金を自由に決められます。
秘密が守られる
任意整理をすることを会社や親族、友人や知人に言う必要はありませんし、場合によっては、家族にも内緒で任意整理をすることもできます。
手続きが早く簡単にできる
任意整理の手続きをする場合には、弁護士や司法書士に相談・依頼します。依頼をすると、あとは基本的に指示に従うだけでよく、あなた自身で消費者金融事業者や貸金融事業者と交渉する必要はありません。交渉は代理人である、弁護士または司法書士が行います。
代理人と消費者金融事業者・貸金融事業者との交渉になるので、法的な債務整理(民事再生や自己破産)の手続きと比べると資料収集の必要もありませんので、比較的早く、簡単に済ませられます。

デメリット

ブラックリストに載る
株式会社日本信用情報機構や株式会社シー・アイ・シーなどの信用情報機関に、事故情報として発生日から5年を超えない期間は登録されます。いわゆる「ブラックリスト」に載るということです。
以後、借入れができない
以後数年間、新規での借入れができなくなります。また、同様にクレジットカードが使用できなくなったり、新規に作ったりといったことができなくなることがあります。
法的な強制力がない
任意整理は、あくまでも「任意」での交渉です。弁護士さんや司法書士さんが間に入ったからといって相手の消費者金融事業者や貸金融事業者が必ず交渉に応じなければならないような法的な強制力はありません。
もし、交渉に応じてもらえない場合には、調停や訴訟など法的な手続きへ移行することもあります。

任意整理の手続きの流れと条件

任意整理の手続きの流れと条件についてご紹介しておきます。繰り返しになってしまいますが、「任意整理」とは借金の支払いが苦しくなり、支払いが困難になってしまった場合に、新しく借金をして返済するようになったり、逃げてしまう前に行う債務整理の方法のひとつです。弁護士や司法書士などの代理人によって、金融事業者との交渉をして、借金の毎月の利子や支払いを減額してもらうことです。

1. 弁護士または、司法書士に相談に行く
まず、借金問題を抱えた方は弁護士さんや司法書士さんに相談をします。相談に行くときには、借金の一覧をまとめて行くと良いでしょう。借金の一覧とは、
  • 借入先の住所
  • 連絡先
  • 現在の債務額
  • 取引開始年月
などをまとめたものです。
他にも、最近届いた請求書などや収入の状況が分かるものを準備して行くと話がスムーズに運びます 。
2. 任意整理を行うことを決定
弁護士さんや司法書士さんとの相談で債務整理を任意整理で行うことが決まったら、正式に依頼をします。このときに、受任通知を消費者金融事業者や貸金融事業者に発送します。これにより、借金の取り立てが停止します。
3. 交渉開始
弁護士さん、または司法書士さんは、受任事実をもって消費者金融事業者やクレジット会社などの貸金融事業者と借金の減額などの交渉を行います。
このときに、最初にお金を借りたときから現在までの支払い明細を金融事業者に開示請求、その支払い明細をもとにして利息制限法による計算を行い、本来払うべき借金の金額を割り出します。
その結果、残った借金の金額を割り出し、どのような方法で支払っていくかを交渉します。
4. 和解成立
消費者金融事業者や貸金金融事業者との和解が成立したら、新たな利息や債務額、支払い金額の合意書を作成し、新たな内容での返済が開始となります。
もし交渉が決裂した場合には、他の債務整理の方法を検討することになります。